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投稿者:カトちゃん
題名:特に、幼児期に大切にしたいこと

今日は、埼玉県全県の特別支援教育に携わる先生方の研究会(埼玉県特別支援教育研究協議会)に指導助言者として参加してまいりました。

私が担当させていただいたのは、「幼児の特別支援教育」という分科会です。

最初に講義をさせていただき、その後お二人の先生から発表がありました。
とても熱心な先生から、多くのことを学ばせていただきました。
改めて、幼児期にかかわることの大切さを実感した次第です。

ところで、先日、ホームページに「特に、幼児期に大切にしたいこと」という文章を掲載しました(「ビリーブとは」にあります)。

少し長文になりますが、改めて、この場に紹介させていただきます。
私たちビリーブが目指すこと、大切にしたいことを是非知っていただければと思います。


『特に、幼児期に大切にしたいこと』

子どもの発達は、トータルで捉えていく必要があります。ことばが出た、とか、絵や文字が書けるようになったということは、それ自体嬉しいことですが、発達の最終目標ではありません。大切なのは、そのような力を相手とつながる上でどのように活用していくかであって、個人的にできるだけでは、あまり意味をなしません。

そもそも子どもの発達は、どこか1点だけが突出して成長するのではなく、対人関係や情緒面、身体面、運動面、認知面(学習)がそれぞれ絡み合って、緩やかに育っていくものです。そのため、運動ができるようになるということは、情緒が安定し、ボディイメージが高まり、人への意識が育ってきて、見通しが持てるようになるというように、いろいろな領域が同時並行的に育ってくることを意味しています。だからこそ、見た目の成長ばかりに気を取られ、振り回されることには十分に注意しなければなりません。

単に、文字を書くことだけなら、そのための方法はたくさんあります。そして、多くの人はそういうわかりやすい「見た目の成長」に飛びついてしまう傾向が見られます。特に、幼児期にそれだけを集中して行うことは、問題があるといえるでしょう。なぜなら、本来はその時期にもっとやるべきことがあるはずなのに(幼児期は学びの宝庫なのです!)、見た目の成長のために多くの時間が割かれてしまうからです。それは、子どもにとって悲しいことと言えるでしょう。

幼児期は、思う存分遊ぶことが大切です。本来子どもは、遊びの中でさまざまなことを学んでいくのです。一言で「遊び」と言っても、興味がなかなか広がらず、どう遊ばせてよいかわからないという声をよく聞きます。「遊び」の提供の仕方や子どもとのかかわり方にも大事なことがたくさんあります。そのことについては、別の場で詳しく説明させていただきます。

文字や数などの学習は、土台さえきちんと整えば、自然にクリアーできる性質のものです。この土台づくりこそが、何よりも大切になってきます。富士山だって、とてつもない広い裾野があるから高い山になっているのです。頂上(見た目の成長)のことばかり気にかけていても、裾野(土台)が貧弱であれば、山は高くなりません。あるいは、無理に高くしても、ちょっとしたことで崩れてしまうでしょう。


ビリーブでは、何よりもこの土台作りに力を入れています。たとえ、1か月後や数か月後に見た目の成長が現れなくても、土台さえしっかりとすれば、1〜2年後に必ずや確実な成長(生きていく力)につながっていくのです。

逆にいえば、目先の成長ばかりにとらわれると、結果的に伸び悩んだり、10代、20代になったときに足りない部分が生じてしまう可能性があるのです。子どもの教育は、将来を見据えて行わなければならないのです。そのために、全体発達を促し、いろいろな領域の力を少しずつ高めていくのです。

そして、そのような土台作りは決して教育的ではなく、楽しい雰囲気の中で行われなければなりません。子どもにとって、楽しいことがモチベーションにつながるからです。しかも、あらかじめ設定された場面だけでなく、やりとりの中で子どもに柔軟かつ臨機応変に応じるという専門的なかかわり方が求められます。

その際、対人関係を重んじ、情緒が安定できる場面設定を行い、発散的かつ落ち着ける活動を取り入れ、手先や目と手の協応、聞く力、聞き分ける力、記憶力、イメージする力を高めることを常に念頭に置く必要があるでしょう。特に情緒面、対人面の力は非常に大切で、この力が育ってなければ、あっても使えない力を身につけるだけになってしまいかねません(あせって学習面を育てる必要はないのです)。


また、ビリーブでは、保護者との連携をとても大事にしています。子どもにとってどのような環境が大切なのかということは、これから子どもが過ごしていく場をよく知らなければなりません。小学校の通常学級であれ、特別支援学級であれ、特別支援学校であれ、その場で何が行われているかということを知った上で、子どもの進む場を決めていかなければなりません。

そのために、保護者に対して常に情報提供を行い、子どもがいきいきと輝ける場を考えていくことを大切にしています。保護者との話し合いの時間を設け、今の課題は何か、そのために何をすべきか、将来必要なことは何か、ということを十分に話し合っていきます。


保護者は、どうしても、近い将来のことを中心に考えてしまいます。それは、ある意味、当たり前のことなのでしょう。しかし、1年以内のことばかり考えていると、本当に大切なことを見失ってしまうことがあるのです。将来に向けて、子どもがひとり立ちできるよう、小さい時期に身につけなければならない力は、目の前のやるべきことと必ずしも一致していないことが多いのです。

年少期にビリーブに入室し、現在は成人し社会で活躍している人たちがたくさんいます。その人たちを見ていて、早い時期に「見た目の成長」を促すのではなく、本物の力を身につけた方がよいと強く実感しているわけです。


そして、それは何も幼児期だけに限らず、就学後も、青年期になっても、ずっと大切にしていきたいことと言えます。社会に出て、その場の人たちと楽しく、穏やかに過ごせる力、場の雰囲気を感じ取る力、いろいろなことに興味や関心を持ち、嗜好性を持ち続ける力・・・。そのような力を身につけるためには、大事なことを見誤らず、少しでも早くスタートを切ることが大切なのです。

2014年8月02日