子どもの成績がよくないと、本人も保護者も大いに気になるところです。特に中学生になると「高校受験」があるため、より心配が募ってしまいます。周りの大人もつい口うるさくなってしまいます。一生懸命勉強させることの背景には、努力すれば成績が上がるという大人自身の経験があるのかも知れません。本当にその方法でよいのでしょうか。
成績が上がらないのには、いろいろな理由が考えられます。例えば、もう何年も前からわからないことが増え、そのままの状態が続いているということです。これは、学習の基礎(土台)が築かれていないということになります。特に、その様子が顕著に表れるのが算数・数学です。たし算が苦手で、いつも指を使ってしまう子は、3+2はわかっても、5+7がわかりません。指が足りないのです。
たし算を勉強するためには、その土台として「10の合成、分解」が自由にできるようになる必要があります。10を1つのまとまりとして理解する力を育てます。すなわち、「7+4」では、指を使ったり、数え足し(7、8、9・・・)をしたりせず、4を3と1に分解し、(7+3)+1=10+1=11という考えを繰り返し練習します。そうすれば、その後のたし算、ひき算、かけ算をマスターできるでしょう。
また、小学校の算数をきちんと理解していないと、中学校の数学(方程式など)もつまずいてしまいます。そういう例は他にもたくさんあります。富士山が高いのは、しっかりとした土台(裾野)があるからで、どの教科もそれと同じことが言えます。
他にも、記憶力に課題があることが挙げられます。基本的に高校生くらいまでの学習は、記憶力でまかなえる部分が多いと考えられます。漢字や英単語、数学の公式、化学記号など、覚えることができれば、ある程度点数を取ることが可能です。人は知っていること、馴染みのあることなら、前向きに問題解決を行うことができるのです。しかし、記憶が弱いとそうはいきません。特に興味がないことは、何度覚えようとしてもなかなか身につかないのが現実です。
しかし、記憶力自体はもともと持っているものであり、高めようとしてもなかなかうまくいきません。だからこそ、闇雲に覚えようとするよりは、内容に興味が持てるような工夫を行っていくことが大切です。それでは、どうすればよいか…。まずは、その子の興味に寄り添うところからスタートします。例えば、電車が好きな子がいれば、時刻表を読んだり(算数)、路線図を見たり(地理=社会)していきます。そうやって、興味の範囲を徐々に広げていくわけです。
あとは、学習に対して苦手意識を持たないことが大事です。もしかしたら、このことが1番大切なのかも知れません。子ども(特に発達障害の子)は苦手なことをコツコツと努力することが難しいと言われています。
あるフランス語の先生のエピソードを紹介しましょう。その先生は、英語が苦手な高校生に対し、試しにフランス語を教えてみたそうです。高校生は、英語は苦手でも、フランス語は初めてであり、苦手意識がなかったため、上手に楽しく教えたところ、ぐんぐんとフランス語が身についていったそうです。そして、大学受験もフランス語を使い受験し、見事難関大学に合格したとのこと。
しかし、実は英語もフランス語も、文法的にはよく似た言語であり、本来なら英語が苦手であれば、フランス語も苦手なはずです。しかし、高校生は難なくフランス語が得意になりました。それは、英語のときとは違い、先入観なしにフランス語を勉強できたからと考えられます。つまり、苦手意識を持たなければ、人はより多くのことをスムーズに獲得できるということです。
いかがでしょうか。他にもいろいろ要因はあると思います。例えば、先生との信頼関係ができているか、家庭が心地よい場になっているか、などが挙げられます。はっきりと言えることは、周りの大人が焦らず、必死にならず、子どもの小さな成功を我がことのように喜び、遊びや手伝いなど勉強以外のことも重視できる…。そのことが、実は学習面にもつながっていくと考えられるのです。
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